
先日、母の家を訪ねてきました。
一人暮らしをしている母のもとへは、できる限り時間を作って足を運ぶようにしています。
ドア分けると、「待っていたのよ」と母の声。
私はまず「何かしてほしいことある?」と尋ねるのが習慣です。
一番多いリクエストは「買い物に行きたい」というもの。
やっぱり、息子と一緒に買い物に行く時間が、母にとっても楽しみになっているようです。
最近、母には認知症の症状が出てきていますが、日常生活はなんとか自分でこなせています。
ただ、買い物では同じものを何度も買ってしまい、冷蔵庫はいつもいっぱい。
賞味期限が切れた食材を整理することも、私が訪れる大切な理由の一つになりました。
何十年も家族のために続けてきた「買い物」という習慣を、今さら止めさせることはできないと感じています。
最初は、冷蔵庫の中身をメモにして持たせたこともありましたが、そのメモ自体を忘れてしまうようになり…。
結局、必要そうなものをどんどん買い込んでしまう母。でも、その「必要そうなもの」は、よく見ると、私の好きな食べ物ばかり。
母の永年の習慣と、私への変わらぬ愛情を感じて、胸が熱くなりました。
だから今は、食べられそうな食材だけを持ち帰ることにしています。
これからも、なるべく一緒に買い物に行きたいなと思っています。
そんなある日、いつものように訪ねると、母からこんなお願いがありました。
「髪の毛、切ってくれない?」
美容院に行くのが億劫になり、自分で切っていたものの、うまくいかなかったようです。
実は、私にとって人の髪を切るのはこれが初めての経験でした。
真っ白に近くなった母の髪を、慎重に、角度をつけながら少しずつ切っていきます。
ざっくり切るとまっすぐなラインになってしまうので、少しずつ、少しずつ。
慣れない手つきでしたが、集中して向き合いました。
切り終わったあと、母は鏡を見ることもなく、
「さっぱりしたわ」
と笑顔で一言。
小さくなった母の後ろ姿を見つめながら、髪を切るという小さな行為が、私にとっての親孝行になればいいな、と心から思いました。
性格的に一緒に暮らすことは難しいけれど、これからもできるだけ、母と一緒に過ごす時間を増やしていきたいと思っています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
また次回、お会いしましょう。
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