最近、実家で高齢の母の髪の毛を切ることがありました。
これで3回目になります。
母は年齢を重ねるにつれ、外出する機会がぐっと減ってきました。
以前は定期的に美容院へ通っていたのに、今では「もう面倒だから行かない」と口にします。それでも、ふと鏡を見て髪を触るしぐさを見ると、やはり気になっている様子が伝わってきます。
そんな母のために、私は「自宅専属のヘアカット係」としてハサミを握るようになりました。技術はありませんが、心を込めて切っています。
自宅で高齢の母のヘアカット・・・散髪セットは手作りで十分
自宅での散髪に使っているのは、家庭にあるもので代用した簡単なセットです。プロ仕様の道具は一切ありません。
- 普通のはさみ(美容用ではない)
- 使い慣れたブラシ
- 髪の毛が服に落ちないようにするためのタオル(ケープ代わり)
この3点セットを用意すれば、高齢の親のちょっとしたヘアカットには十分対応できます。
首元にタオルを巻いて準備完了。
経験がないぶん、毎回“感覚”で切っていますが、ありがたいことに母はあまり仕上がりに文句を言いません。
「さっぱりしたわね」「軽くなって気持ちいい」と、嬉しそうに笑ってくれるので、こちらもホッとします。
髪の毛を切る時間が、親子の絆を深める時間に
今回も伸びた髪を全体的に短く整えることから始めました。
まずは長さをざっくりカット。後ろ髪には少し段をつけて、自然な丸みを出すよう心がけます。
勢いよくザクザク切ってしまうと、まるで“段々畑”のようなヘアスタイルになってしまうため、慎重に少しずつ、左右のバランスを見ながら整えていきます。
横や後ろは鏡を使ってチェック。
「ここが重たいかな?」と感じた部分は微調整。母もじっと座って協力してくれるので助かります。
ときどき「ちょっと引っ張らないでよ」と小言を言われつつも、和やかな時間が流れていきます。
不思議なもので、髪を切っている間はほとんど言葉を交わさなくても、どこか心が通っているような気がします。
ふと、子どものころに母が私の髪を結ってくれた記憶がよみがえりました。
当時も母の手はとても優しく、温かかったことを思い出します。
今は立場が逆になり、私が母の髪を整える番になりました。その時間が、静かに親子の絆を確かめ合う貴重なひとときになっているのです。
「日常のケア」こそが本当の親孝行かもしれない
カットが終わった後、母は鏡を見て「ありがとう、すっきりしたわ」と一言。
その表情はどこか満足そうで、安心したような笑顔でした。
私たちはつい「親孝行=大きなこと」と考えがちですが、実際にはこうした小さなケアが一番の思いやりかもしれません。
介護のような大げさなものでなくても、高齢の親との暮らしの中で、「できること」を見つけて実行する。それだけで十分です。
特に、自宅でのヘアカットは、高齢者にとって心身ともにリフレッシュできる時間。
気分転換にもなり、生活の質を保つうえで意外と大きな意味を持ちます。なにより、「髪を整える」という行為には、自分自身への関心や尊厳を取り戻す力があるように思います。

これからも、母のヘアカット係として
母が美容院へ行きたくなる日が来るまで、私はこの“自宅散髪係”を続けていくつもりです。何度やっても慣れないし、出来栄えも良くはありません。
でも、それもまた家庭ならではの温かさなのだと思います。
母が「ありがとう」と言ってくれる限り、そして私自身がこの時間を大切だと思う限り、この習慣はずっと続けていきたいと感じています。
まとめ
高齢の親との時間は、何気ない日常の中にこそ詰まっています。
特別なことをしなくても、髪を切ってあげる、自分の手でケアしてあげる・・・それだけで、心は深くつながっていきます。
「親の介護」や「在宅ケア」にプレッシャーを感じている方もいるかもしれません。
でも、完璧を目指さなくてもいい。
自宅でできることを、心を込めてすることが、最高の親孝行につながるのではないでしょうか。
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