
佐藤航陽著『メタバースの歩き方と創り方』を読んで
こんにちは。今日は、佐藤航陽さんの著書『世界2.0 メタバースの歩き方と創り方』の読書感想をお届けします。
その前に、この本の内容はとても難解で、数回にわたり読み返しました。
それでも、感想文が上手く伝わらなかったらすみません。
この世界は「現実」じゃない?
「私たちが現実だと思っている世界は、実は仮想に過ぎないのかもしれない」
そんなSFのような問いを、真っ向からテクノロジーと思想で掘り下げているのが本書です。
タイトルにある「世界2.0」とは、従来の物理世界(世界1.0)とは異なる、デジタル技術によって再構築された新たな情報世界のこと。
メタバース=単なる3D仮想空間ではなく、人間の知覚・価値観・経済活動を根底から変える可能性を秘めた「もう一つの現実」として描かれています。
世界1.0と世界2.0の違い
著者は、「物理的制約に基づいた社会」が世界1.0であると定義します。
時間・空間・距離といった制限の中で私たちは暮らし、それが社会のルールを形作ってきました。
しかし今や、デジタル技術の進歩によって、物理的な制約はどんどん取り払われています。たとえば、VR空間で会議を開いたり、AIが生み出した経済圏で買い物したり、NFTでデジタルアートの所有権を売買したり
すでに世界2.0の入り口は、私たちの生活に忍び込んでいるのです。
メタバースは「新しい現実」
本書が強調するのは、メタバースが「リアルの代替品」ではなく、「現実の進化形」であるという点です。
人間の知覚はすべて脳の情報処理によって成り立っており、ある意味では現実も脳が再構築した仮想にすぎません。そう考えれば、仮想空間がリアルと同じ価値を持つのも当然。むしろ、創造性や自由度において情報世界のほうが優れている、と著者は言います。
経済と価値観のアップデート
この本の魅力は、「技術」の話だけにとどまらず、人間の「価値観」や「経済活動」にも深く切り込んでいるところです。
これまで経済の価値は「希少性」にありましたが、デジタルの世界では「共感」や「独自性」が価値になります。たとえば、NFTや仮想通貨、ゲーム内アイテムなどは、「複製できるもの」にも関わらず、固有の価値を生んでいます。
さらに「存在感(Presence)」という概念も紹介されます。たとえ物理的に会っていなくても、同じ仮想空間にいることで「一緒にいる感覚」が成立する
これは教育やビジネス、芸術など、あらゆる分野に影響を及ぼす考え方です。
未来を生き抜く3つの視点
佐藤氏は、これからの時代を生きるために大切な3つの視点を挙げています。
- 空間の再定義
地理的な制約が消えた社会では、「場所」の意味が変わります。東京に住みながらアフリカの仲間と共に働くことも可能になる。 - 存在の再定義
AIアバターや複数のデジタル人格を持つ時代では、「一人の自分」に縛られる必要はありません。 - 価値の再定義
リアルな物だけでなく、データや感情、時間の共有といった「見えない価値」が中心になる未来です。
世界2.0は理想郷?
もちろん、すべてがバラ色ではありません。本書では、監視社会やAIによる仕事の代替、プライバシーの消失といった負の側面にも触れています。
それでも著者は、「テクノロジーはあくまで道具であり、使い方次第」だと語ります。大切なのは、私たち一人ひとりが「どんな世界を創るのか」という意志を持つことだと。
人間とテクノロジーの関係性
とても印象的だったのが、イギリスのSF作家ダグラス・アダムスの次のような考察です。
人間は、自分が生まれた時に存在していたテクノロジーは自然だと感じ、
15歳から35歳の間に登場したテクノロジーは革新的だと感じる。
しかし35歳を過ぎてから登場したテクノロジーは、「自然に反するもの」だと感じる。
これは、シニア世代が新しいテクノロジーに抵抗感を持つ理由をうまく言い表していると思います。そして私自身もミドル世代として、「今さら…」と思いがちですが、「これからの世界に何ができるか」に目を向ける方が、ずっと前向きだと感じました。
最後に:私たちも「世界の創造者」
『世界2.0』は、単なるメタバースの解説書ではなく、「私たちはどんな世界を作るか?」という根源的な問いを投げかけてきます。
世界2.0は、限られた人が支配する舞台ではありません。
誰もが参加できる創造のフィールドです。
だからこそ、私たち一人ひとりが思考をアップデートし、自分なりの「世界の作り方」を模索することが求められているのです。
メタバースやWeb3と聞くと、ちょっと遠い未来の話に感じるかもしれません。
でも実は、私たちの暮らしの中にも、その兆しはすでに始まっているのです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
また次回お会いしましょう!
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