
今年も、わが家のベランダにニオイバンマツリの花が咲いてくれました。
紫と白が入り混じった可憐な花びら。風に乗ってふわりと漂う、爽やかで優しい香り。
この季節になると、毎年変わらずに咲いてくれるこの花に、私は何度も救われ、癒されてきました。
ニオイバンマツリとの出会いは、もう25年ほど前のことです。
園芸店で見かけた、たった15cmほどの小さな苗木。それが、この花との最初の出会いでした。
もともと「香りのいい紫の花」として記憶の片隅に残っていたのですが、そのとき初めて名前を調べ、「ニオイバンマツリ」という素敵な響きの名前を知りました。
それ以来、この花にぐっと親しみがわいたのを覚えています。
当時住んでいた家の庭では、最初にバラを育てようと、土壌改良に力を入れました。
膝が沈むほど深く掘り起こして、良質な土を入れ替えるのは大変な作業でしたが、不思議と苦になりませんでした。
いま思えば、それだけ庭づくりに夢中になっていたのかもしれません。

バラを植えたあと、まだ少しスペースが残っていたので、ふとした思いつきでニオイバンマツリの苗木を2本、脇に植えてみました。頼りなく見えた小さな苗は、10年の歳月をかけてすくすくと育ち、やがて2メートル近くの立派な株に成長しました。
「一番育った時の写真は残っていませんでした・・・残念です」
春が訪れると、枝いっぱいに咲き誇る花たち。その美しさに道行く人たちも足を止めては写真を撮っていくようになり、いつの間にか我が家の庭が、ちょっとした“隠れた名所”のようになっていました。
しかし、数年前、やむを得ずその家を離れることになり、大切に育ててきたニオイバンマツリともお別れしなくてはならなくなりました。なんとか一緒に連れて行けないかと掘り起こして移植を試みたものの、新しい環境に馴染むことができず、残念ながら枯れてしまいました。
長い間一緒に季節を過ごしてきた花でしたので、弱っていく姿を見るのは本当に辛く、まるで大切な友人を失ったような気持ちでした。
自分の手で枯らしてしまったような気がして、申し訳なさでいっぱいになったのを、今でもはっきりと覚えています。
でも、それで終わりにはしたくありませんでした。
新しく住み始めたマンションのベランダで、もう一度ニオイバンマツリを育ててみようと、小さな鉢に苗木を植えました。
前のような広い庭ではありませんし、植物を育てるには少し不向きな環境かもしれません。それでも、その小さな命は静かに、そしてたくましく育ってくれました。
そして今では、毎年春になると、あの懐かしい香りがベランダに広がります。
朝、カーテンを開けてベランダに出ると、ふわっと香るその匂いに「今年もありがとう」と、思わず声をかけたくなります。

植物は言葉を話さないけれど、確かに私たちの気持ちに寄り添ってくれる存在だと思います。
小さな鉢の中で、変わらず咲き続けてくれるこの花は、私にとっては癒しであり、励ましであり、心の支えでもあります。
今年もまた、この小さな命が咲いてくれたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。
これからも、変わらずに大切に育てていきたいと思います。
ブログを読んでいただき、ありがとうございました。
また、ここでお会いできますように。
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