宮崎駿の世界を読み解く新たな視点
こんにちは。今回は、赤坂憲雄さんによる著書『ナウシカ学』を読んだ感想を綴ります。
きっかけは単純で、「風の谷のナウシカ」の漫画版が大好きだったから。アニメ映画では描ききれなかった深いテーマや世界観に強く惹かれていたのですが、読めば読むほど謎が深まっていくのがこの作品の特徴でもあります。
そんな中で出会ったのが『ナウシカ学』という一冊。
読後、私の中でモヤモヤしていたものが、少しずつ言葉として形になっていく感覚がありました。
「なぜ理解できなかったのか」がわかる本
漫画「風の谷のナウシカ」は、そのビジュアルの圧倒的な情報量と、断片的に語られる神話的背景、宗教的な引用の多さなどから、何度読んでも“わかったようでわからない”感覚がありました。
ですが、この『ナウシカ学』を通して、それらの要素がどこから引用されているのか、作品の思想的背景にどんなものがあるのかが明快に示されており、とても腑に落ちました。
印象的だったのは、「漫画ではわからなかったことが、文章として読むことで理解できた」という体験です。
漫画は、文字と絵が一体となって表現されるメディアです。
特に宮崎駿作品は、絵が緻密で情報量がとても多く、一枚のコマに込められた意味や感情の読み解きに、知らず知らずのうちに集中力を使ってしまいます。
そのため、絵の力に引っ張られて、言葉の奥行きまで十分に意識が届かないことがあるのかもしれません。逆に『ナウシカ学』は文字だけなので、自分の頭の中でゆっくりと解釈を積み重ねていくことができました。
記憶の中の「好きな場面」が、再び鮮明に
また、この本では私が特に好きな場面も取り上げられていて、読みながら胸が熱くなりました。
それは、ナウシカが異国の神が祀られているお堂に入り、即身仏のように暮らす盲目の人々に出会う場面です。彼らは、ナウシカの語りかけにじっと耳を傾け、そして彼女が立ち去ったあとに、静かにこう語ります。
永くまったかいがありましたね。
ええ、風が来ました。
やさしく猛々しい風が。
お行き、心のおもむくままに、いとしい風よ。
この言葉は、何度読んでも心に響きます。
“やさしく猛々しい風”という表現が、まさにナウシカという人物そのものを表しているようで、美しくも切ない余韻を残します。
「ナウシカ」をもう一度読むために
『ナウシカ学』は、ただの解説書ではありません。
作品に込められた宗教観、死生観、自然観などを丁寧にひもとき、読者の理解を深めてくれる知的ガイドブックです。
そしてこの本を読み終えた今、私は改めて漫画『風の谷のナウシカ』を読み返したくなっています。きっとこれまでとは違う見え方をするはずです。
ナウシカという作品が、時を経てもなお多くの人の心を惹きつけてやまない理由。
その一端をこの本で垣間見ることができた気がします。
最後に、先ほどご紹介した名シーンの一節をもう一度。
永くまったかいがありましたね。
ええ、風が来ました。
やさしく猛々しい風が、お行き、心のおもむくままに、いとしい風よ。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
また次回のブログでお会いしましょう。
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