先日、ついに手に入れた秘蔵版。
700ページにも及ぶ大作で、読み始める前から胸の高鳴りが止まりませんでした。
今回読んだのは、架空戦記小説の名手・佐藤大輔による長編小説。
彼の作品の中でも、唯一完結している貴重なシリーズです。
架空戦記とは思えぬリアルな歴史改変
物語は「捷一号作戦」・・・日本海軍がアメリカ艦隊のいるレイテ湾へと突入する作戦から始まります。
主力となるのは戦艦「大和」「武蔵」。
実際の歴史では悲劇的な結果に終わったこの作戦が、作中では日本側の勝利として描かれています。
その勝利によりアメリカは戦略の見直しを迫られ、結果としてソ連の日本侵攻を容認。
日本は南北に分断されるという、もしもの世界が展開されていきます。
日本の分断国家化はまるで戦後のドイツや朝鮮半島のような状況。
読んでいて背筋がぞくりとしました。
さらに、物語はその後も続きます。
ベトナム戦争や湾岸戦争、そして宇宙開発に至るまで、歴史と政治の交錯を描いた壮大なスケールで展開。
主人公・藤堂とその家族は、さまざまな局面に関わっていきます。
印象に残った2つの戦いの場面
正直、後半の分断国家となった日本での戦いについては、あまり心を動かされませんでした。
ですが、物語の中で私の心を大きく揺さぶった場面が二つあります。
どちらも戦いのシーンです。
1. レイテ湾突入と輸送船団への攻撃
物語序盤、太平洋戦争の終盤において、日本の連合艦隊がレイテ湾へ突入するシーン。
アメリカ軍の上陸部隊と輸送船団を相手に、日本海軍は大きな犠牲を払いながらも目的を達成していきます。
海軍将兵たちが「この日のために訓練を続けてきた」と言わんばかりに、命をかけて突き進む姿には胸を打たれました。
単なる勝敗だけでなく、「なぜ戦うのか」「何のために命をかけるのか」という問いが描かれており、読む者の感情を深く揺さぶります。
戦場には当然、兵士だけでなく、その家族の運命も関わってきます。
戦場の臨場感とともに、戦争が持つ複雑な人間模様も描かれており、ただの戦記ではない奥行きがありました。
2. 沖縄特攻――戦艦武蔵の最期
もう一つ、忘れられないのが戦艦「武蔵」が沖縄に向かう場面。
アメリカの空母部隊に襲撃される可能性が高い状況の中、思いがけず大型台風が襲来し、航空機の攻撃から逃れることに成功します。
そして、武蔵はアメリカ戦艦部隊と正面からの艦隊戦へと突入します。
結果として武蔵は沈没するのですが、敵艦隊にも大きな打撃を与え、軍艦としての、そして乗員たちの「軍人としての本分」をまっとうしていく姿が描かれていました。
勝敗を超えた覚悟や誇り。
戦争を美化することなく、それでも確かにあったであろう「使命感」が、読んでいて自然と胸に響いてくるのです。
緻密な描写と圧倒的な臨場感
佐藤大輔氏の作品は、なんといっても文章の緻密さと臨場感が圧倒的です。
どのページも「今、この戦場に自分がいるのではないか」と思うほどのリアリティ。
戦闘シーンの描写はもちろん、登場人物たちの感情や葛藤も丁寧に描かれていて、まるで一本の映画を観ているようでした。
700ページというボリュームもあっという間に感じられ、物語の世界にどっぷりと浸かることができました。
最後に・・この本に出会えた幸運
この作品に出会えたことを、心から嬉しく思います。
戦争や歴史、そして「もしも」の世界に興味がある方にはぜひ読んでいただきたい一冊です。
分断国家となった日本という大胆な設定から始まり、過去・現在・未来へとつながるストーリーの広がり。
読み終えた今も、登場人物たちの姿が胸に残っています。
これからも、佐藤大輔氏の作品を一冊一冊大切に読み進めていきたいと思います。
また素敵な本に出会ったら、こちらでご紹介しますね。
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